2020年12月25日金曜日
山本義隆著「磁力と重力の発見①~③」を読んで
ヨーロッパ文明の古代からの歴史において、磁力、重力といった力の伝わり方が直接目には
見えない遠隔作用的な力が、どのように理解、解釈され、そしてついには、それが近代物理学
の誕生を告げるニュートンによる画期的法則の発見に至るまでを記する、千年の時を紡ぐ浩瀚
な物理学史の書です。
第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞、第30回大佛次郎賞を重ねて受賞しています。
物理学の素人である私がこの本に興味を持ったのは、やはり磁力、重力という身近な現象で
ありながら、素朴に不思議に感じる力に惹きつけられたからです。そして今回、10日間の入院
という時間を得て、ようやく全巻読破という目的を果たすことが出来たことを、喜びたいと
思います。
本書の内容については、正直専門知識に乏しい私に、どこまで深く理解出来たのかは分かりま
せん。しかし、全体を大雑把に概観して感じたところを記すと、まず、古代ギリシャにおける
プラトンとアリストテレスは、近代科学の基礎ともいえる当時としては斬新な論理的思考を
展開し、その影響はキリスト教的価値観の蔓延によって一時衰退しながらも、ルネサンスを
迎えるに当たり復活します。
しかし磁力、重力に関しては、これらギリシャの哲学者は明確な答えを持ち合わせていな
かったために、これらの力の本格的な探求は、ここから始められることになります。以降、神
の力、魔術に原因を求められながら、最初に実験的手法で磁石と磁針の指北、指南性を証明
したのは、ペトロス・ペレグリヌスでした。
ある現象を証明、測定するために実験を行うということは、正に近代科学の魁をなすもので
あり、時を前後して大航海時代の到来と共に、磁石を利用した羅針盤は、爆発的に普及して
行きます。
マゼランによる世界一周航海によって地球の丸さが証明され、コペルニクス地動説、ケプラー
惑星軌道の法則、ガリレイの重力の発見が続き、ニュートンの万有引力の発見、クローンの
磁力における同法則の適用に至ります。
その過程で私の印象に残ったのは、ニュートンは重力の原因の探求をやめ、あくまで法則を
導き出すことによって、その存在そのものを証明したことです。
駆け足で見て来ましたが、ヨーロッパ人がギリシャ哲学で生み出された論理的思考と、ルネ
サンスを経て生まれた実験精神、合理的精神と進取の気質によって、近代物理学を打ち立てた
ことが分かります。読み応えのある本でした。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿