2021年1月1日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」2055では
俳優松重豊の随想・短篇小説集『空洞の中身』から、次のことばが取り上げられています。
芝居の最中に台詞が出て来ないという恐怖。
これは役者が死ぬまでうなされ続ける日常的
な悪夢の代表なんじゃないかな。
私は役者ではないので、この恐怖を切実に感じ取ることが出来るとは思えませんが、ただ、
若い頃に能楽の仕舞を稽古していて、時々舞台にも立ったので、ある程度の実感はありま
す。素人の私にとっても、舞台で台詞や仕草を忘れたらどうしようというのは、大きな
不安の種だったのです。
でもプロの役者にとっては、真剣に舞台に取り組んでいるゆえの、台詞を失念することの
恐怖なのでしょうから、この緊張感ややり遂げた後の達成感は、より増幅され、それが演者
にとっての舞台の魅力にもつながっているのだと、推測されます。
この言葉を読んで、私たち市井の平凡な人間も、日常の中にその時にしかない瞬間を生き、
それを全力で全うしたいという感覚を持つことが出来れば、更に人生も充実したものになる
のではないかと、感じさせられました。
0 件のコメント:
コメントを投稿