2019年10月14日月曜日

京都高島屋グランドホール「第66回日本伝統工芸展京都店」を観て

本日最終日に、恒例の伝統工芸展を観て来ました。台風の襲来、その他の事情に
より、ようやく滑り込みで観ることができました。最終日は終了時間も早いので、
残念ながら駆け足で観ることになり、いつもよりより絞って、もっぱら染織作品を観ま
した。以下、その感想を記します。

染織部門は、さらに研ぎ澄まされた作品が、展観されているような趣きがあります。
これは昨今の着物離れ、高額な商品の販売不振が、色濃く反映されているように、
感じます。

各作家は、そのような困難な状況の中で、現代の伝統工芸品とは如何なるもので
あるべきかということを、懸命に模索しているように思われます。

そしてその答えとして、華美ではないけれども洗練されていて、より技術的に手の
込んだものが追求されているように、感じました。その傾向は、決して今年に限った
ものではありませんが、今回私が染織部門だけに絞って観たので、さらにその思い
を強くしました。

勿論、ここ数回では、観客に工芸品をより身近に感じてもらうために、出口近くの
販売コーナーで、出品作家の手ごろな小品を紹介する試みも、行われています。

その試行を否定するものではありませんが、展示品においては、ある意味どれだけ
手間を掛けた作品を制作するかということが競われているので、そのギャップを
強く感じました。

最後に染織部門の入賞作について、記します。朝日新聞社賞 神谷あかね作 生
絹着物「海の中のできごと」、藍の模様と余白の白、その境界に覗く淡い黄色の
コントラストが、涼しげで、洗練された効果を生み出しています。

日本工芸会奨励賞 岩井香楠子作 型絵染着物「春のはじまり」、白地に裾を中心
として全体を埋めるように染められた、規則正しい淡いブルーの花と、ところどころに
配された浅黄色の花が織りなすハーモニーが絶妙で、近くから見ると、細い横じま
が、軽やかなリズムを生み出しています。

同じく日本工芸会奨励賞 武部由紀子作 刺繍着物「あはいの空」、作家が長年
追求して来た幾何学的な刺繍表現の一つの完成形と言ってもいいような作品。
着物柄における、しなやかさを備えたミニマル・アートを彷彿とさせる作品、と感じま
した。

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