2014年10月8日水曜日

漱石「三四郎」における、三四郎の臆病さについて

2014年10月6日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「三四郎」106年ぶり連載
(第四回)に、事の成り行きで、三四郎と一つ寝床で休むこととなった
初対面の女が、翌日別れ際に彼に語る、次の言葉があります。

「女はその顔を凝と眺めていた、が、やがて落付いた調子で、
  「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」といって、にやりと笑った」

さて困りました!なぜなら、三四郎と同じ年頃の自分を思い返して見ても、
女性に奥手の私もこのような状況になったらきっと、彼とあまり変わり映え
しない行動に出たに違いないと思うからです。

女性に興味はあるけれども、何か自分とは異質なものとして、はれものに
触るようにしか接することが出来ない。

だから、三四郎の狼狽は手に取るようにわかります。

でも女の言葉は、彼にとっても突拍子もなく、予想外だったでしょう。
郷里から東京の大学に向かうという自負を持ちながら、その実はまだ
うぶで世間知らずな若者です。自分の驚愕によって図らずも、これから
否応なく巻き込まれることとなる、大人の世界の複雑さと、待ち受ける
前途多難を、ひしひしと体感したというところでしょうか。

以降の彼の女難をも想起させるニュアンスを含んだ、なかなか絶妙の
物語の導入部分です。

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